Allen suwaru × 杉山至(青年団・六尺堂) 座談会レポート

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Allen suwaru × 杉山至(青年団・六尺堂) 座談会レポート

-1人の少年の信念を演劇にしたかった-


 

写真:(左から)栗田学武、鈴木茉美、杉山至、來河侑希


劇団アレン座(Allen suwaru)が始動する。

はっぴぃはっぴぃどりーみんぐ〈はぴどり〉として活動してきた來河侑希、鈴木が新たに結成した劇団アレン座。

骨太なストレートプレイで、今日の世界を視界に入れた社会派の舞台を、真正面から作り出していくという。

その旗揚げとなる公演は『空行』、5月18日から29日まで東京・吉祥寺シアターで上演する。

キャストは劇団員の來河侑希、栗田学武、普光院貴之と、

客演に若手俳優の藤田富、高宗歩未、永井理子、実力派として知られる中西良太、近童弐吉、内田淳子、古屋隆太が参加する。

この作品と劇団としての展開を、舞台美術家として活躍する杉山至を交えてアレン座の來河、鈴木、栗田に語ってもらった。

 


 

誇りとプライドを持って生きている少年

 

──まず、アレン座を作ったきっかけから。

 

來河 僕が実際に体験したことを、どうしても演劇にして伝えたいと思ったんです。

2013年に映画の取材でミャンマーに行ったとき、15歳のストリートチルドレンと出会って、その少年が暮らしているコミュニティーを訪ねたんです。

そこには少女の娼婦もいたり、先進国の目線で置いてみると物質的に恵まれていない生活がありました。

でもその少年は物乞いはしない、働くけど身は売らない、苦しい中でも周りとは違う、誇りとプライドを持って生きていて、

それが心に焼き付いて離れなくて、どうしてもその子の信念の話を演劇にしたいと思ったんです。

それで〈はぴどり〉の活動を行いながら、いつかこれを作ろうと温めていたんです。

 

──鈴木さんが書く〈はぴどり〉の作品も、社会性がありますね。

 

鈴木 たぶん自分の中にある正義なり感性なりを出すところを探していたと思うんです。

そこに私が知らなかった世界を來河さんが体験してきてくれて、今回、來河さんを介してですが、すごいエネルギーをもらいました。

 

──栗田さんがアレン座に入ろうと思ったのは?

 

栗田 僕はもともと会話劇が好きで、青年団のワークショップを受けたこともあったり、今回のような作品は一番やりたかったことなんです。

ですから來河さんから話を聞いたとき、ぜひ一緒にやらせてくださいと頼みました。

 

──杉山さんの参加は楽しみですね。

 

來河 僕は杉山さんを尊敬していて、絶対に今回の美術は作ってもらいたかったんです。

 

杉山 來河くんからもらったロングプロットを読んで、よしやろうと。

もともと若い世代が何かを発信することに関しては、一緒に作っていきたい気持ちは持っていたので。

 

──美術プランももう出来ているそうですね。

 

杉山 地面は砂のイメージで、枕に入っているストローの芯を素材にしています。化学物質なので石油製品が体にまとわりつくような、どこか危険な匂いを出したいと。

中央に地面からパイプで塔のようなものを伸ばして、東南アジアにある樹の上の崩れそうな建物の感じを出しています。

 

來河 そこに窓がついていて、塔の中から出られない娼婦たちが外を見るのですが、

そこからしか世界と繋がることができないんです。

 

──塔から連想すると、タイトルの『空行』は、空に逃げるしか行き場がないということでしょうか?

 

來河 タイトルは「からゆきさん」からなんです。

でも「からゆきさん」では具体的すぎるので、もっと抽象的に、空虚なものに進んで行くとか、そういう意味でつけました。

 

鈴木 ただ、私はおっしゃるように空があるから救いがある、

そういうダブルミーニングを意識して脚本を書いています。

 

 

重くて辛い現実でも

心が浄化されるものに

 

 

──栗田さんの役柄と台本を読んだ印象は?

 

栗田 出てくる少年少女たちはすごく信念を持って、汚されない領域を持っているなと。

でも大人たちは社会の縮図みたいなポジションなんです。

そこをどう出していこうか、悩みながら読みました。

 

來河 今回の話には主人公の少年少女たちと、彼らを利用する人たち、逆に救おうとする人たちが出てきます。

それは僕が現地で、国際支援とかボランティアの意味とか、色々感じること向き合わない現実ががあったからで。

 

栗田 本物の善意とはなにかを描きたいと、言ってましたよね。

 

來河 見てきたことのいくらかでも、今の日本の人たちに伝わればと。

そのへんは鈴木さんがうまく取り入れてくれて、僕だったら暗くて絶望的になりそうな話も、

ちゃんとカタルシスのある物語にしてくれています。

テーマは重いし、辛い現実も書かれていますが、最終的には、心が浄化されるような綺麗な作品になっていますので、

ぜひ楽しみにしていてください。

 

 

■活力源 

栗田 これは多分うちの集団の全員だと思うんですけど、毎日飲みに行ってるんですよ。それが活力源ですね。

 

來河 いつも4人で家族みたいだよね。お昼も一緒で。

 

栗田 たまに仕事が長引いちゃって、ちょっと先に食べに行っててくださいって言って、

でもみんなが食べ終わったりしてると寂しい(笑)。

本当に好きな仕事を、好きなメンバーとして、一緒にご飯を食べに行けるのは、こんなに幸せなことはないから。

 

鈴木 私はタイムスケジュール通りにいくのが活力源ですね。

朝、何時に起きて、シャワーを浴びて、朝ごはんを食べて、そのあとメールチェックしてというようなルーティンをきちんと守る。

健康的な生活をしたいんです。

知り合いに漫画家さんが多いんですけど、連載を持っているとルーティンを崩さないことが大事なんです。

 

來河 僕は面白い舞台を観て感動したとき、それをめっちゃ喋ると元気になるんです(笑)。

それが何日もないと腐ります(笑)。

結局、趣味が舞台なんですよ。それですぐ喋りたがる。聞いてくれないと怒っちゃう(笑)。

 

栗田 この間、僕が次の日観る舞台を、先に観てきて喋ろうとしたから、さすがにやめてくださいって(笑)。

 

 

 

■プロフィール

すぎやまいたる○神奈川県出身。国際基督教大学卒業。同大学在学中より劇団「青年団」に参加。

01年度文化庁芸術家在外研修員としてイタリア・ナポリの舞台美術工房にて研修。

06年、地点『るつぼ』にてカイロ国際実験演劇祭ベスト・セノグラフィー賞受賞。

13年度読売演劇大賞最優秀スタッフ賞受賞。

近年は青年団、地点、サンプル、LUDENS等の舞台美術を担当。現在、桜美林大学、女子美術大学非常勤講師、舞台美術研究工房・六尺堂ディレクター。二級建築士。

 

きたがわゆうき○福岡県出身。劇団Allen suwaru主催。

映画「HEART BEAT」で微妙な高校生の心理描写を熱演し注目される。

同映画は田辺弁慶映画祭市民審査賞等多くの国内外の映画祭にノミネートされる。

NHK大河ドラマ「風林火山」TBS「世界の中心で愛を叫ぶ」、「H2~君といた夏~」

乙一原作「GOTH」映画「NOISE」に出演。

4年の歳月をかけ自身が企画、出演した外務省後援日本ミャンマー共同制作映画「Passage of Life」が公開待機している。

舞台では、自身で制作、出演するというスタイルを貫き多くの舞台作品を世に送り出している。

 

すずきまみ○演出家、脚本家、声優。2013年、來河侑希とともに自身の脚本・演出作品を上演するプロデュース劇団

「はっぴぃはっぴぃどりーみんぐ(はぴどり)」を結成。

心理学、アニメ、ゲームなどに造詣が深く推理作品からアクション作品など様々な切り口から作品を手がけている。

 

くりたまなぶ○大阪府出身。主な出演作品は、映画『土竜の唄』『Who is that man!? あの男は誰だ!?』、

ドラマ『Wの悲劇』、舞台『JYUKAI-DEN-桃源-』『大正浪漫探偵譚~君影草の設計書~』『ホイッスル』など。

 

〈公演情報〉

劇団アレン座(Allen suwaru)第1回公演

『空行』

脚本・演出◇鈴木茉美

出演◇藤田富 高宗歩未 永井理子 中西良太 近童弐吉 内田淳子 古屋隆太 來河侑希 栗田学武 普光院貴之

5/18~29◎吉祥寺シアター

〈お問い合わせ〉0120-240-540(平日10:00~18:00)

http://allen-co.com/soraiki/

 

構成・文◇宮田華子 撮影◇安川啓太